2006年02月10日

バイパーちゃん 第3話(長いです)

リアルタイムでMSX版をやったことのない私がMSX版厨を名乗ってもいいものなんでしょうか…?

そして「SCCという楽器を与えられ、おまけにボツ曲までお土産に持たされてホルホルしてるモトアキおじさん」を入れるの忘れたぁ〜!

登場人物

・松井さん=松井直樹
かなりのヘビメタ好きで、他の使用人たちと「メタルスレイブ」というバンドを組んでいる。
MSX町に住居を持ち、バイパーちゃんたちのお店のMSX町支店作りを担当。
同じMSX町担当の「カントク」(※本作には出演しません)とはマブダチ。

・町口おじさん=町口浩康
コンマイ家の使用人。ベテランでリーダー格。
バイパーちゃんの才能を見出し、商店街の歴史に残るお店を作り上げた立役者。
おっとりしているが相当の切れ者らしい。

・メタリオン
バイパーの実の妹。いつの間にか松井さんが新しく建てた店の店主になっていた。

・ジェイムス
メタリオンの彼氏。彼女の店の店員として働いている。
じつはバイパーの昔の彼氏。
他の店員に「ヴェノム博士」などがいる。

バイパーちゃん 第3話
「松井さん(後編)」


1987年夏。
「ままままままま町口おじさ〜〜〜ん!!!」
ここは、コンマイ家で一、二を争う忙しい仕事場、町口おじさんの部屋。
そこにバイパーちゃんがまろびながら駆け込んできました。
「どうしたの?血相変えてー。2番目のお店が忙しいんじゃないのー?」
町口おじさんはそんなバイパーちゃんの様子に関係なく、いつもの調子で答えます。手だけはひたすらすごい速さで動きつづけていますが。
「松井さんがMSX町に新しく作ったお店、あれなんなのよ!!」
「(松井君は「さん」付けなのに僕はおじさん呼ばわりなんだねぇ…僕は昭和35年生まれだからまだ27歳なんだけどねぇ…)ああー、そんな話もあったねぇ。今日開店だったのかー」
そうです。松井さんはあの後、MSX町のバイパーちゃんのお店の隣に、新しいお店を建てたのです。
バイパーちゃんも、彼が新しく何かを作っていることは知っていたのですが、当然自分が関わるお店だろうと思っていたのに何のオファーも来ないので、そのうち忘れてしまっていたのです。
そこに風の噂で届いた開店の報。いったい何のお店を作ったのだろうと、MSX町に出向いたバイパーちゃんは、驚愕の事実を目にしたのでした。
「で、どうだったの?すごい混んでたでしょー?松井君、雑誌でアイディア募集したり、お外でチラシ配ったり、すっごく一生懸命だったからねぇ」
町口おじさんは自分のことのように嬉しそうでしたが、その態度はバイパーちゃんの神経をますます逆なでするばかりでした。

「な、ん、で!あたしのお店と同じ名前で、隣に建ってるのに、あたしの店じゃないのよ!!」
ついに彼女の怒りが爆発しました。町口おじさんも仕事が一段落したらしく、くるりと椅子を回転させてバイパーちゃんの話に加わります。
「僕がOKしちゃったからだねぇ。ごめんねー」
「なんでOKしちゃうのよ!あたしのお店と同じ看板に「2」って書いてあるから、あたしの2軒目のお店の支店かと思って入ったら、全然別の店じゃないのよ!商品は全然別だし、店主は妹のメタリオンだし、そ、それに…あ…あたしのモト彼のジェイムスが、メタリオンとイチャイチャしてるし!!!」
「キミのお店は「II(つー)」、あっちのお店は「2(に)」。別のお店じゃないかー。それにキミの2軒目のお店は出来てからまだ何ヶ月かしか経ってないじゃないかー。支店なんてまだどこにも建てられないよー。(彼氏の件は、触れないでおこう…)」
「似たようなもんでしょ!どっちも1軒目のお店の隣に建ってるじゃない。それに商店街の店の方が先に出来てるんだし、逆サイドにはローブリちゃんとのお店だって建ってる!MSX町の、あたしの店の隣に何か作るんだったら、そのどっちかに合わせるのが普通じゃないの?」
バイパーちゃんはさらにヒートアップしてまくし立てます。
ちなみにこの頃、バイパーちゃんの1軒目のお店や、ローブリちゃんとのお店の支店は出店ラッシュでした。
色々な地方の担当者が、極力本店の雰囲気に近づけた支店を次々と建てていく様は壮観でした。
なのに、本店のことを全く無視した2軒目を、松井さんは作ってしまったのです。あれだけすごい支店をMSX町に作ってくれた、松井さんが。

そのとき、町口おじさんが短くつぶやきました。
「合わせなくていいって、言ったんだ」
「え?」
虚を突かれて、黙ってしまうバイパーちゃん。
おじさんは短く咳払いをすると、いつもの口調に戻って話し出しました。
「バイパーちゃんの2軒目のお店と、松井君のお店ねぇ、確かに名前は似てるけど…どんなお店を作るのかを発表したのは、松井君の方が先なんだよー。バイパーちゃんの言うようにするんだったら、逆に、僕らのほうが松井君に合わせないといけないかもねぇー?」
その言葉に、さすがのバイパーちゃんも少なからず動揺します。
「え、ちょ、それは…。発表してなかっただけで、松井さんと同じぐらいから私たちもお店を作っちゃってたし、だいいち、松井さんのあのお店は、商店街で出すのには向いてないよ」
彼女は改めて、MSX町の新しい店の様子を思い出しました。そして、自分の2軒目の店のそれと、頭の中で比べてみました。
…比べるまでもありませんでした。
松井さんのお店は、MSX町ではもうこれ以上出来ないというぐらいに大きかったですし、一生懸命商品の質や説明、売り方を工夫してとても魅力的でしたが、しょせんはMSX町の中での話です。
今のバイパーちゃんのお店の大きさや派手さを見てしまうと、それを商店街に持ってくる気にはなれませんでした。
商店街にはどんなお店でも建てられるようになっていましたから、作る人が、どんどん新しい資源や材料を持ってきて、その時点で建てられる最高スペックのお店を建てるケースがほとんどでした。
でもMSX町は(もちろん、ファミコン町やその他の地方でも)決まりが厳しく、外部からはほとんど資源や材料を持ってくることは出来ず、その土地にあるもので何とかするしかありませんでした。今まで建てた支店でも、それでいちいち大いに苦労をしていたのですから。
「・・・」
あれだけ騒いでいたバイパーちゃんがすっかり大人しくなってしまいました。彼女は利口な子でしたので、なんとなく、町口おじさんが何を言わんとしているかが予想できていました。
「おじさん…私、松井さんのところへ行ってくる」
おじさんは、バイパーを褒める時のように、にっこりと笑って彼女の頭をなでました。
「分かったよ。気をつけてねー。夕飯までには、かえって来るんだよぉ」


松井さんの部屋からは、相変わらずヘヴィメタルが聞こえてきました。でも、松井さんがそれに合わせて発していたのは、歌声ではなくキーボードやプリンターの音。とても忙しそうです。それはすなわち、MSX町の人がどれだけ彼を慕ってくれているかの表れでした。
彼の仕事を中断させるのは気が引けて、バイパーちゃんはしばらく部屋の前で逡巡していましたが、ほどなく松井さんに見つかってしまいました。
彼はすごく喜んで彼女を丁重に部屋に招き入れてくれました。
「久しぶりやな。…バイパーちゃんがMSX町の店に来てくれたのは、メタリオンたちから聞いて知っとった。」
「うん。でも私ビックリして…さっきまで、町口おじさんのところで大騒ぎしてたんですよ」
「ははは。その光景が、目に浮かぶようやな。…たしかに、バイパーちゃんの店の名前、勝手に使こたのは謝る。でもなぁ、商店街にはいくつもバイパーちゃんの店が出とう。MSX町にも欲しくなるのは、分かるやろ?…前後してしもたけど、バイパーちゃん。あの名前、使わせてくれへんやろか。商店街の店とは違とるけど、あれは、間違いなく『MSX町のバイパーちゃんの店』の2軒目やねん」
そう言って、彼はひざの高さまで頭を下げ、懇願しました。大人の人にそんなことをされるなんて!バイパーちゃんはビックリして制止します。
「ちょ…!松井さんやめて、私怒ってません、ビックリしただけです。確かにあのお店、私のMSX町支店と雰囲気は同じなのにすごく進化してます。やっぱり松井さんはスゴイですよ!」
彼は照れ笑いを浮かべながら、伸び気味の頭髪をかきました。
「手前味噌やけど、バイパーちゃんのMSX支店は最高の出来やった。ファミコン町の担当者がすごくビックリして悔しがっとうのを見たときは、町の人と一緒にガッツポーズしてしもた。でも、商店街には次に、バイパーちゃんとローブリちゃんのお店が出来たやろ?その店に行って…俺はすごく悩むことになったんや。
俺は一応、MSX町の担当の技術者や。MSX町で何が出来て何が出来へんか、ある程度までは分かっとる。バイパーちゃんたちの新しいお店、大きゅうて。派手やって…これはMSX町には建てられんて…ガンバリだけじゃぁ、MSX町がよう追いつけんぐらいまで、商店街は進化してもうたって、分かってしもたんや。
バイパーちゃんのお店で、あれだけ町のみんなに喜んでもろて、俺は嬉しかったんやけど、同時に、『他のお店も建ててくれるんやな?』っていうプレッシャーを感じるようになってしもたんやな」
バイパーちゃんの手に、資料の束が渡されました。徹底的に調べつくしてぼろぼろになった、商店街の店の資料でした。
「最初は、1軒目の店の時みたいにどうやったらMSX町の条件で商店街の店に近づけて作れるか、そればっかり考えとった。でも、1軒目の時点でギリギリやったものはもうそれ以上無理でけへんかった。しかも、ファミコン町担当のやつらが俺へのリベンジに燃えて、すごい支店を作り始めてた。ファミコン町に本気出されたら到底敵わへん。MSX町は、その程度の町やった」
そこまで言うと、彼はふーっと息を吐き、少し自虐的に笑いました。
「…でも俺は、あの町に住んどるし、あの町が大好きなんや。あそこの人たちが、本当に大好きなんやなぁ。」

「それで俺、町口さんに相談したんや。バイパーちゃんたちのことを、あの人に相談せん理由がないから」
そして松井さんはお得意の、町口おじさんの物真似を始めました。
「あの人は、笑ってこう言うんや。『その気持ち、よ〜く分かるねぇ。僕も商店街のお店で何が出来るか、いっつも考えてる。コストのこととかねぇ、コンマイの旦那様からどうやってOKもらおうか、それが一番ツライねぇ。』」
ますます洗練されたその物真似に、バイパーちゃんも思わずくすくすと笑ってしまいました。
気を良くした松井さんは、その調子でさらに続けます。
「『でもそれって結局、商店街のお客さんに、驚いてもらったり、喜んでもらったり、したいからだよねぇ。んー、松井君もきっと、みんなに喜んで欲しいから、悩んでるんだよねぇ?
・・・・・・どうかなぁ松井君。もしだよ。僕らに合わせなければ、あの町で、どんなものが作れる?』」
バイパーちゃんは、松井さんを見つめていました。というよりは、松井さんが演じる町口おじさんを見つめていたのかもしれません。
おじさんは、彼女などとは比べ物にならないほど、松井さんのMSX町にかける実力と情熱を理解していたのでしょう。
商店街で、辺境の町で。歴史に残る店を建てた技術者同士、少なからず通じる部分があったのかも知れません。

「町口さんに『合わせなくていい』って言ってもろて、それで痞(つか)えが取れたみたいにアイディアが“だぁー”出てきよった。俺はそれから必死で、店の設計図書いた。無理して作ったバイパーちゃんのお店な、無理しとうけど、オリジナルでええんならもうちょっと無理でけるんやないかって部分、結構あったんや。やから、そういう部分を使こて、いまMSX町で出来る限り大きい店を設計したんや。商品の企画書もぎょうさん書いた。どんな商品を置けば、お客さんがビックリして喜んでくれはるか、ずーっとその考えが、頭ん中を支配しとった。」
松井さん、キラキラしてる。
バイパーちゃんはそんなことを考えていました。
いつか松井さんはMSX町の人たちを「キラキラしてる」と言っていましたが、彼もまた、そんなMSX町の住人でしたから。
「…んで、気がついたらバイパーちゃんの店とは似ても似つかわんものが出来あがっとった。ハハハ。俺は怒られるんやないかと思いながら、その書類を、町口さんに見せた」
「で、町口おじさんは、なんて言ったんですか?」
バイパーちゃんはそう相槌を入れました。つまり「物真似をしろ」の合図です。
「『グレイトだねぇ〜!素晴らしいねぇ、おもしろそうだねぇー!よし、さっそく旦那様にこれを持って行こうじゃないか〜。MSX町の人、また幸せになれちゃうねぇ』」
本当に彼がこう言ったかはすこぶる疑わしいセンテンスでしたが、口調だけはそっくりで、二人はしばし大爆笑していました。

「で、看板だけは借ったけど、さすがにもとのバイパーちゃんの店とは違いすぎるかな思て、バイパーちゃんじゃなくて妹の方を呼んだんや。彼女だけじゃ不慣れそうやったから、ジェイムス君をパートナーに付けたんやけど…その、なんちゅうか、かんにんな」
あまり言及されたくない部分に話が及びます。
バイパーちゃんはわざと、芝居がかった風に拗ねて見せました。
「べ、別に!あくまでモト彼ですから、気にしませんよ…で、でも妹の折角の晴れ舞台なんですから、コケたら承知しませんよ?」
松井さんはそれに応えて、大きくうなづきます。
「了解したで。まぁでも、もし万が一上手くいけへんかったら、そん時は俺が責任取る。責任とってメタリオンは俺がもらう!」
「・・・そっちの責任かいっ!!!」


かくして、1軒目のお店の人気を受け、鳴り物入りで開店した松井さんの2軒目のお店は、MSX町の人に大変な驚きと喜びを与えました。
MSX町が過去のものとなってしまった現代でも、MSX町に建っていたお店の中で一番素晴らしかったのがここだという人は数え切れません。
その後12月に、ただでさえ少ない出番を「サーベルタイガー&スラッシャー」なる兄弟に奪われてしまったローブリちゃんが、また町口さんのところに乗り込んでくるのですが、それはまた、別のお話です。

END
※このお話はフィクションです。
posted by KEI-KO Fujisaki at 18:16| Comment(1) | TrackBack(0) | グラディウス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ヘビメタや、ないヘビメタや博士とかなっていた
新しくレイブや広い松井直樹かなりとかをジェイムスメタリオンしたかった。


Posted by BlogPetのでぃんどん at 2006年02月11日 09:41
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